boy meets girl

hope to be free

変身 / 東野圭吾

WOWOWでも実写化された東野圭吾サン作品の中でも有名な作品。かなり難しく、厳しいお話であることを理由に母は当時中学生だった私がこの本を読むのを止めました。とはいえもう私も大きくなり、その後はたくさん本を読んできたつもりです。

 

世界初の脳移植により自分の人格が失われていく恐怖と葛藤を描いた作品。物静かで気の弱い主人公がある日強盗事件に巻き込まれ、少女を救おうとして頭を撃たれ右脳のみ脳移植される。しかし彼は徐々に自分の中に変化を感じだし、ドナーについて調べ始める。右脳の持ち主の人格へと変わっていく恐ろしく、悲しい展開。語り手が常に主人公であるのに対して、本の中には時より主人公の周辺にいる人物たちの日記が書かれている。そこで彼らの本心も覗く事が出来、読者は常に不安にされる。

 

可哀想だなと思ってしまったのは彼女のめぐみ。ここまでの悲しい事件に巻き込まれてしまって可哀想で仕方ないが、誰も予期できたことではなく、誰かが意図的に巻き込んだわけではなかった。実家から帰って、彼を匿ったのは彼女自身の選択であり、必然だったといえなくもない。

 

ただ、東野圭吾サン作品の中でも初期に書かれたお話であったわけか登場人物の使い方が今ほど器用ではないかなとは思いました。名前も紹介して何度か登場させたのにあまり話に関わってこなかったり、もうひとかき何かあってもよかったのになー、など。仕事場の友人とか、直子ももう一捻り欲しかったかなとか、直子に惚れてた研究員ももうちょっとなんか出来なかったかなとか。etc。とはいえさすがは東野圭吾サン。またまたすごい作品に出会えちゃったな。

 

人間の欲望が1人のか弱い青年をここまで変えてしまい、ここまで恐ろしい事態を招いてしまったのかと苦しくなるばかりである。