boy meets girl

hope to be free

GO / 金城一紀

僕は何者?日本で生まれ、日本で育ったけれど、僕は≪在日≫と呼ばれる。元ボクサーのオヤジに鍛えられ、これまで喧嘩23戦無敗。ある日僕は恋に落ちた。彼女はムチャクチャ可愛らしい≪日本人≫だった――。軽快なテンポとさわやかな筆致で差別や国境を一蹴する、感動の青春恋愛小説。直木賞受賞作。

(公式様から引用)

 

初めてこのあらすじを読んだ時に抱いた印象よりもずっとずっと読みやすい。小説としても薄い方だし、言葉の使い方や物語の運びが思っていたよりもフランクで面白い。
在日について多少の説明があったりもするけど、それはむしろ基礎知識というか興味深いというか。全くお話の害になっていたりはしない。むしろ良い。

 

主人公の杉原は自分のことを捻くれ者だと言っているけど、本当にその通り。語り手として見えてくる彼の考え方に私は関係ないし気持ちはわからないはずなのに共感してしまう。

 

小論文の授業で、「日本人とは何か」がテーマになったことがある。その時使った興那覇潤さんの本には考えられるであろう4つの「日本人」と認められる定義の中の1つを私は満たしていない。

・国籍が日本であること

・日本語を話して暮らす

・出自が日本民族である

そして、

・いま日本に住んでいる

結局興那覇潤さんも、「日本人」と認められる決まった定義はなくて、結局その時の会話の文脈で決まると結論づけている。誰も「日本人とは何か」なんてわからない。
じゃあ「在日」と呼ばれ差別されてきた杉原は一体誰?誰が「彼は日本人でない」と言える?そういうあなたは?日本人なの?彼と何が違うの?

終わりに近づいてきた時に桜井に拒絶されてしまって饒舌になる杉原の気持ちはなんとなく分かる。日本に住んでないから日本人じゃないのかも程度の私になんて彼は分かってほしくないだろうけど。それでも、どうして桜井の父親は韓国とか中国の男とは付き合っちゃダメなんて言えたのだろうと疑問に思ってしまう、もし自分の父親だったら一発ビンタを入れてやりたいくらいには苛立てるよ。
軽いタッチで描かれたあの薄い本の中には、今を生きる人たちみんなが読んだ方がいいようなことがたくさん詰まっている。

 

単純な青春ストーリーとしても十分面白いと思う。出てくるキャラクターはどれもみんな魅力的で、それぞれと主人公の関係性がとても良い。キーパーソンである父はずっと陽気でダメダメな風に描かれているけど、少し私の父とも似ている。器が大きくて、とても自由、に見えてとても大きなものを抱えている。彼女の桜井もワガママお嬢様に見えてちゃんと自分で考えられる自立した女性。親友の正一はすごくいいやつで繊細で勇敢で、主人公が言うように生きなければならなかった人だと思う。唯一の学校の友達、加藤もただのヤバいやつではなくて、一人前を目指すアツイ男だろう。
とにかく、ハッピーエンドでよかった。桜井が分かってる女でよかった。

 

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