boy meets girl

hope to be free

できることならスティードで / 加藤シゲアキ

幸い加藤さんの思想や社会で起こった出来事への率直な意見、新たな経験を通して感じたことなどに触れる機会は今までにもたくさんあったけど、やはり今回のように加藤さん自らの言葉で時間をかけて文字にして頂けるととても受け取りやすい。

加藤さんは勉学に励んだ経験があり基本的常識的知識もありながら、多趣味な人である。それに加えて芸能界という特殊な世界で生きているからか様々なことが "広い" 人だと私は思っている。知識の幅も広く、興味の幅も広い。一つの物事も広く捉えられる人なので感情的になることもあるが、冷静で理論的な意見を話されているところをよく見る。

今回のエッセイはテーマが "旅" だったこともあってか海外の話や世界的に話題となっている話などに多くスポットライトが当たっていて素直に嬉しかった。私は人生の半分を海外で過ごしていることもあり、日本だけに注目することはあまりない。社会的に話題となっていることも海外ではどうなのか気になったりして比較したりするクセがある。それはエンターテイメントも同じで、日本の音楽や映画の話をよくするが、海外の音楽や映画も大好きだ。故に、加藤さんが海外で起こった出来事をどう捉えているのか、また、海外の音楽や映画などにどの程度触れているのかなどがとても気になっていた。結果私なんかよりよっぽど加藤さんの方が興味の幅も深さも大きかったことがわかった。

本書を読んで自分なりに感じたこと考えたことはそれぞれの章であったけどその中のいくつか印象的なところだけここに書き留めておく。

 

Trip 6 ニューヨーク

加藤さんがNEWSのメンバーたちとニューヨークへ研修に行き、グラミー賞に招待されたことはリアルタイムで知っていた。慶ちゃんは当時担当していた番組で中継をしていたし、日本に帰国後、加藤さんが慶ちゃんと2人でBruno Marsの日本公演を観に行った話もどこかできいた。しかし、その旅で加藤さんが本書で書かれているようなことを考えていたなんてもちろん知らなかったし、同時にその当時知ることが出来なかったことが今になってでも知ることが出来るなんて私はラッキーだなぁ。

2018年のグラミー賞授賞式のことは私の当時通っていたインターでも少し話題になった。生徒に限らず先生なども世界中から集まっているだけあり、あまりテレビや芸能の話にはならない学校だったが、あの時話題になったことは少しだが覚えている。

Keshaの復活や「Time's Up」、白いバラ。声をあげることの必要性を彼女たちは私たちのロールモデルとして確かにさらけ出してくれたと思う。白いバラは授業で何度か出てきたこともあり、とても印象的だった。

そんな授賞式を初めて生で観て重さや苦しさを感じた加藤さんはやっぱり私の尊敬する人だし、きっと本書にも書けない、書ききれないほどの想いを抱えていたんだと私は思っている。日本の芸能界は世界と違い、明言しすぎないことがロールモデルとしての務めという風になっている。あの先を加藤さんが言いたいのか言いたくないのかは分からないけど、アイドルとしても作家としても憚られるところはあるのだろう。

 

Trip 8 小学校

「NEWSな2人」という番組は放送開始当初から私が気に入って視聴している番組で、本当に学ぶことが多い。特にこの章で話されている回のことはよく覚えている。番組はこの家族に何度か取材をしており、加藤さんが実際におうちにお邪魔したのは2度目か3度目だった。これらの回で取材していたのは "ポリアモリー" という新しい家族の形についてであったが、正直私もここで書かれている、小学校に通う意義についての議論が1番心に残っていた。今回のエッセイでは丁寧に言葉を使い説明されているが、その時加藤さんが話していたのはたった数行でしっかりとした説明が聞けなかったのが私は心残りだった。しかし本作で加藤さんは彼女にうまく伝わらなかったことが悔しく、どうしたら上手く伝えられるかをその後も考え続けていたようで、またそこも共感する。私もずっと考えていた。放送視聴後、私だったらどう考え、どう発言するかをずっと考えていた。もちろんそんな機会などないので結局数ヶ月後には忘れてしまっていたのだが、今また思い出した。

加藤さんのいうように、小学校はただ学問を勉強する場所ではない。私は小学校だけでも転校を繰り返し、合計3校に在籍していたが、その経験やそれぞれの学校で体験したことは違い、確実に今の自分を作った要素だと思う。

 

Trip 9 スリランカ

両親のおかげで私はまだ10代ながらたくさんの国や地域に旅行した経験がある。自分のことを知らない、自分の知らない場所に行くことや見たこともない景色を探すことが大好きで、今後もたくさん旅をしたいと思っている。

スリランカにはまだ1度も行ったことがないので加藤さんの話はとても新鮮だったし、行ってみたい欲が膨らんだ。東南アジアに滞在経験のある身としてはそこまでの驚きは感じないかもしれないが、とても興味が湧いた。

それから、私はスペイン滞在経験があり、また、美術に興味があることからサグラダ・ファミリアグエル公園を手掛けたガウディ建築はかなりリサーチしていたことがあるので加藤さんの引き出しにも同じものがあったことが分かって嬉しかったし、その博識ぶりにもまた改めて感動した。

(12/03/20放送の「バラいろダンディ」で、建築や美術館などの文化的なものを見に行くのが好きだと言っていたが、私も全く同じなので是非一緒に旅行に行きたいです。(笑))

 

Trip 10 渋谷

出身地と言える場所がないという話には激しく共感した。私も加藤さんと全く同じだからだ。私の場合常に拠点としてきたような場所(親が買った戸建)が日本にあったでそこが出身地となるのだが、なんだかんだ人生の半分を海外、しかも2国で過ごし、今の私にとって重要な小中学校生活を移動し続けたこともありなかなか胸を張って出身地と言える場所はそうない。そして加藤さんもいうように、他のみんなのように決まって帰る地元に友達はいないし、ただ純粋にその場所を愛することも出来ない。これはどこで誰と会ってもいつも思う自分とその他の人との大きな違いだと考えてきた。故に私の尊敬する加藤さんが自分と同じであり、また地元に強い愛はなくともそこで生活してきた事実は変わらないという結びは強く私の心にささった。

 

Intermission 3 ホンダスティード400

とてもおさまりが良く、また思春期だからこその思考やちょっとクサいエンディングが反対に初々しさを感じさせるようで面白かった。と、思ったのだがあれは 'Last Trip 未定' を読む限り、加藤さんのマネージャーサンの実話なのだろうか?それともあそこだけフィクション?ん~そのはっきりさせないところもまた一つのお話として面白いのか。

 

間に入っている 'Intermission' たちもショートストーリーながら不思議な魅力を感じたし、エッセイの中にも、例えば 'Trip 4 岡山' や 'Trip 13 浄土' など身近な人との別れの話では少し涙した。

最初から最後までとても読みやすかったためたった1~2日で読めてしまったのだが感情は忙しかったし、読んだ後になぜか達成感というか、たくさんのことを学び、また新しいことにチャレンジしたり、旅行に行ったり、いろんなことをしてみたくなった。

 

それからこれはすごく個人的なことだが、私は最近小論文を書かなくてはいけなかった時期が長くあったことをきっかけに(きっと本当のきっかけはもっと前にあったが)最近はよく世界や日本で起こっている時事問題に興味が強くあり、特に人間社会における多様性には注目していた。上記にあるように、今回のエッセイで加藤さんはニューヨークに行った際に訪れたグラミー賞授賞式のお話をきっかけにジェンダー問題のお話をされていたが、私もその件には覚えがあったのでなんだか嬉しかった。同じトピックについて加藤さんはどう受け止めたのかを少なからず知ることが出来たからだ。

 

加藤さんの言葉や考えを私なりに吸収したいと強く思った。

加藤さんはどう考え、どう受け止めるのかをもっともっと知りたいと思ったし、お話したいし、ディベートしてみたいと思ってしまうあたり私は結構加藤さんのことが好きなんだな~なんて再認識した。

 

あー結婚したい。

 

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